初めての ”ラボ型オフショア開発"【2章】ラボ型オフショア開発って何?
2016/09/21
1.ラボ型オフショア開発って何?

“ラボ型オフショア開発”は、オフショア開発の新しい形態です。“ラボ契約”とも言います。 オフショア開発は開発業務を海外に委託すること全般を指しましたが、“ラボ型オフショア開発”では、本国(日本)のプロジェクトマネージャが現地の専属スタッフとチームを組んで開発を行います。
従来のオフショア開発
従来のオフショア開発は、請負会社への業務委託ですから、当然、次のような形態になります。
- 委託先の会社に仕様書や指示書を示し、見積りを取る。
- 開発内容に追加・変更がある場合は、再見積もりになる。
- 委託先の開発スタッフのアサイン(割り振り)は委託先の都合による。
- 開発プロジェクトの進行は委託先に流儀に一任される。
- 最終成果物に対して委託先に報酬が支払われる。
このため、開発が具体的にどのように進んでいるのかは見えにくく、開発が一種の“丸投げ”で、“ブラックボックス”状態になることも多くあります。 その為、思い通りの出力(成果物)が得られないこともあり得ます。
ラボ型オフショア開発
これに対し、ラボ型開発は、一定期間(数ヵ月~数年)に特定の開発スタッフを確保し、本国(日本)から派遣されたプロジェクトマネジャーが専属のスタッフを直接コントロールして、自社開発のようにプロジェクトを進めます。

「担当者」は「プロジェクトマネージャー」に変えたい エンジニア(開発者)はふつう背広は着ていない
ラボ型オフショア開発の代表的な事例として、次のようなものがあります。
- スマホアプリ開発
- SNSアプリ開発
- ゲーム開発
- Webデザイン・Webサイト制作
- グラフィックデザイン・DTP
- CRM(顧客関係管理)システム開発
etc…
2.ラボ型オフショア開発のメリットとデメリット
ラボ型オフショア開発のメリット
ここでは、ラボ型オフショア開発のメリットについて考えていきます。
人件費の削減によるコストダウン
請負型のオフショア開発と同様に、ラボ型オフショア開発でも“人件費の削減によるコストダウン”が図れます。国によって差はありますが、スキルが日本人と同等レベルのエンジニアの人件費はかなり安く、開発プロジェクト全体のコストダウンが期待できます。
さらに、通常は固定費になる人件費を変動費に変えることができます。
見積り依頼や仕様書・指示書が不要
請負型のオフショア開発では、あらかじめ仕様書・指示書を用意し、委託先から見積りを取った上で、発注することになります。仕様の変更などがあった場合には、仕様書・指示書の変更と再見積もりが必要です。開発プロジェクトの開始時に仕様が完全に固まっていることは珍しく、途中段階で必ず仕様変更が発生します。
ラボ型開発では仕様の変更が起こった場合、プロジェクトチーム内で吸収をし、仕様書・指示書の変更や再見積もりのための時間と労力を無くすことが可能になります。そのため、安心して開発プロジェクトを開始できます。
プロジェクトマネージメントの自由度が高い
ラボ型開発では、現地のスタッフを自社の開発チームの一員のように扱えます。開発スタッフに直接指示を出しながら、プロジェクトを進めることができるのです。仕様などが途中で変更になった場合でも、開発チーム内で柔軟な対応が可能です。
ノウハウを蓄積しやすい
ラボ型開発では、開発スタッフをプロジェクト専属にすることができます。1つのプロジェクトが終了しても、契約期間内であれば、次のプロジェクトでも同じスタッフで開発を進めることができます。
そのため、契約期間が長いほど、開発スタッフにノウハウを蓄積しやすくなり、ノウハウが蓄積されればされるほど、開発がスムーズに行えるようになります。
ラボ型オフショア開発のデメリット
ここでは、ラボ型オフショア開発のデメリットについて考えていきます。
「(1章で話した) オフショア開発のデメリット」(一部除く)に加えて、次のような点が挙げられます。
なお、デメリットは、ラボ型オフショア開発を行うにあたってクリアするべき課題とも言えます。
単発の案件(スポット案件)に適していない
ラボ型オフショア開発では、一定期間(数ヵ月~数年)に一定の開発スタッフを確保し続けることになります。仕事があっても、なくても、同額のコストが発生します。
そのため、開発業務に継続性がないと、スタッフが遊んでしまい、採算が取れなくなる可能性が高まります。
この点で、単発の案件には適していないと言えます。
成果が出るまで、一定の時間(立ち上げ期間)が必要
現地の開発スタッフは、プロジェクトの内容については白紙の状態です。
社内開発であれば当たり前のことも、順次、説明・指導していく必要があります。また、本国(日本)と同じ開発の流儀や手法を理解し、慣れてもらうことが重要です。
そのため、プロジェクトチームによる開発が軌道に乗るまで、一定の時間がかかるのは仕方ありません。
立ち上げ期間としては、通常3ヶ月程度が見込まれます。
積極的なチームビルディングが必要
プロジェクトマネージャーが現地のスタッフを率いて、開発を円滑に進めていくためには、積極的なチームビルディングが必要です。スタッフとの信頼関係き、チームの一員としての士気を維持することも重要です。
現地のスタッフは案件を丸投げできる外注(業務委託)先ではなく、ラボ型開発の契約期間中はの自社内のチームであると考えなければなりません。
3.ラボ型オフショア開発の料金体系を知ろう!
ラボ型オフショア開発の料金体系例
以下の表は、プロジェクトリーダー、開発スタッフ、通訳の料金例を日本円換算でまとめたものです。 また、参考として、プロジェクトリーダー1名、開発スタッフ5名、通訳1名でチームを組んだ場合の月額料金も付け加えてあります。
プロジェクトリーダー | 開発スタッフ | 通訳 | 月額料金例 | |
---|---|---|---|---|
A社 | 30万円/月~ | 25万円/月~ | 15万円/月~ | 170万円/月~ |
B社 | 約27万円/月~ | 約21万円/月~ | 約19万円/月~ | 約151万円/月~ |
C社 | 約25万円/月~ | 約15万円/月~ | 約15万円/月~ | 約115万円/月~ |
D社 | 15万円/月~ | 3.5万円/月~8万円/月 | 15万円/月~ | 約70万円/月~ |
会社によっては、スタッフ1名ごとに管理費(3万円~)がかかることがあります。スタッフにボーナスを支給する場合もあります。
4.ラボ型オフショア開発の流れ

ラボ型オフショア開発を依頼するまでの流れ
ラボ型オフショア開発を依頼し、プロジェクトを開始するまでの流れは、おおよそ次のようになります。
1.ラボ型オフショア開発が可能な会社を調査・検討する
複数の候補企業を選び、どこに依頼するか検討します。 この段階から詳しい説明を受けるようにします。
2.相見積もりを行い、条件を知る
希望に合いそうな信頼のできる会社に見積もりを取ります。 見積もりと内容を自社内で検討し、発注する会社を決めます。
3.現地の視察、スタッフ候補との面接を行う
必要に応じて、現地の視察やスタッフ候補との面接などを行います。
4.契約する
正式に契約します。
5.現地開発チームを組織する
現地開発チームを組織します。 プロジェクトリーダー(ブリッジSE)、開発スタッフが 必要な場合は通訳の準備がいります。
6.プロジェクトマネジャーを現地に派遣する
自社からプロジェクトマネジャーを選出し、現地に派遣します。 ※プロジェクトマネジャーを現地に派遣しない形態もあります。
7.プロジェクトを開始する
プロジェクトマネージャと現地のプロジェクトリーダー(ブリッジSE)の指揮のもと、プロジェクトを開始します。