ベトナムのIT業界におけるオフショア開発(外注開発)と近年の変化について
ベトナムのIT業界やオフショア開発の現在とは?
コンピューターシステムの運用や管理だけでなく、開発から海外の企業に委託するシステムである「オフショア開発」。このシステムを利用することで企業は人件費やコストを安く抑えることができるというメリットを得られます。そのオフショア開発国として注目されている国がベトナムです。近年、ベトナムではIT業界に変化が起き始めているといわれますが、ベトナムのIT業界に何が起きているのでしょうか?
ベトナムのIT業界の基礎情報
まず、ベトナムIT業界とはどのような状況なのでしょうか?もともとベトナムは国策として「2020年までに工業国として体制を確立する」という目標を掲げ、その中にはIT分野も含まれており、教育機関や現地企業が中心となって若いエンジニアの育成に励んでいます。その甲斐あって、現在ベトナムにはIT企業が600社以上、ITエンジニアが30万人以上いると言われています。このように国の後押しもあり、情報技術系の学部は学生に非常に人気が高く、毎年5~6万人のエンジニアを輩出しています。
そして、ベトナムではまだ人件費が比較的安いことがIT業界におけるメリットとなっています。もともとオフショア開発は「アメリカがインドに開発を委託し始めたこと」が起源だと言われ、過去日本においても中国をオフショア開発地とすることが多くありました。しかし、その進出企業の多さ故、現在のインドや中国では委託費が高騰してしまい、本来の目的であるコスト削減が難しくなっています。さらに、エンジニアがオフショア開発を通じて一定以上のスキルを獲得すると、さらなるスキル向上を求めて独立をしたり、より好待遇の企業に転職してしまうなど、優秀なスキルを持った人材をオフショア開発の為に維持し続けることが難しい状況になりました。
そのためまだまだ人件費が安く抑えられるベトナムが注目され、現在はオフショア開発国として多くの人に認知されているのです。
ベトナムのソフトウェア会社の傾向の変化
上記の様にオフショア開発国として認知度の高いベトナム。もちろん日本からも多数の企業がベトナムでオフショア開発を行っています。そんなベトナムIT業界は現在どのような成長や変化を遂げているのでしょうか?また、これからの課題はあるのでしょうか?
近年ベトナムの若手エンジニアたちの間に「自立心の芽生え」や「サービス内容に対するモチベーションの上昇」がみられ、「どこかの国で誰かが使うサービスを匿名でつくる」ことに疑問を感じる人が多くなっていると言われます。そういった変化の理由の一つとして、ベトナム人は愛国心が強く、「自国に貢献したい」という人が多いことが挙げられます。そのため、自分自身でサービスを1から作り上げる人や、日本で起業しベトナムのオフショア開発をより認知させたいという思いを持つ人も増えていると言います。そうした人達の活躍によって、結果的にサービス内容のレベルが上がるだけではなく、ベトナムのエンジニア達の「自分たちがサービスを担っている」という自覚が芽生えているのです。
こうした若手エンジニアの変化は「コストの上昇」を引き起こしてきています。しかしながら、エンジニア達の成長に伴いサービス内容のレベルも上がったため、コストが上昇することは必然的なことであるとも言えるでしょう。今後、サービス品質とコスト面がどのような変化を遂げるのかに注目しつつ、ベトナムでのオフショア開発利用の検討や、ベトナム企業との関係性の維持を図ることが必要となってくると考えられます。
最後に
オフショア開発国として依然人気の高いベトナム。低コストの開発委託先として注目され始めた時期から現在にかけて、短期間で急成長を遂げている国です。「人」の変化を含めた業界全体の動向を踏まえつつ、今後のベトナムオフショア開発の利用、ベトナム企業との取引や関係性への対応をしっかりと行っていくことが必要となるかもしれません。